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東京高等裁判所 昭和61年(行コ)31号 判決

東京都港区南麻生五丁目三番二九号

控訴人

斎藤博

右訴訟代理人弁護士

伊東眞

東京都港区西麻布三丁目三番五号

被控訴人

麻布税務署長

宮島義忠

右訴訟代理人弁護士

島村芳見

右指定代理人

安達繁

前田昌男

松村佳幸

増渕実

右当事者間の所得税更正決定等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人が昭和四二年五月一六日付けで控訴人の昭和三八年分の所得税についてした更正のうち、総所得金額一九三一万七九四〇円を超える部分並びにこれに係る過少申告加算税及び重加算税の賦課決定を取り消す。被控訴人が昭和四二年五月一六日付けで控訴人の昭和四〇年分所得税についてした更正のうち、総所得金額七五六万一四六二円を超える部分及び重加算税の賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであり(ただし、原判決七枚目裏一四行目の「重加算税を」を「算出される重加算税額の範囲内で」と、同八枚目裏四行目の「再割引うけて」を「再割引を受けて」と、同一一枚目表末行の「一年半たつて」を「一年半を経て」と、同一六枚目裏六行目の「預金残高照明書」を「預金残高証明書」と、同三七枚目表の(5)〈5〉欄の「東京鉄鋼」を「東京特殊鋼」とそれぞれ改める。)、証拠関係は、原審及び当審の証拠目録記載のとおりであるから、それらを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求中原判決において棄却された部分は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決が理由として説示するところと同一であるから、これを引用する。

1  原判決一七枚目表四行目の「配当所得、」の次に「不動産所得、」を加え、末行の「そして」から同裏九行目の「前受収益」までを、「手形割引者は、割引により満期時ににおいて実現される手形金相当額の利益を取得するから、手形金額と取得価額との差額が手形割引による収入を構成するが、右収入は、当該手形を満期に取り立て、又は再割引を受けることにより、時間の経過に応じて現実化される(もつとも満期において手形金額相当の利益が実現されない場合もあり、再割引の際と割引のときと同率の割引料でないことはありうるが、それは別途処理することにより賄いうる。)。一般に公正妥当と認められる会計処理の基準によれば、すべて収益は、その発生した期間に正しく割り当てられるよう処理すべきものとされている(企業会計原則第二損益計算書原則一A参照)ことに照らすと、手形割引による収益」と、末行の「したがつて」を「従つて」と、同一八枚目表五行目の「第一回」を「原審第一回及び当審」とそれぞれ改める。

2  同一八枚目表六行目の「なお、」の次に「本件係争年度当時においては、前示企業会計原則注解〔注5〕(2)及び所得税基本通達は未だ制定されていなかつたのであるが、当時においても公正妥当と認められる会計処理の基準が右と同様であつたことは、成立に争いのない乙第一号証の一、二及び原本の存在及び成立に争いのない乙第二三号証からも明らかであり、又、昭和三七年法律第八二号により商法二八五条の四が追加されたことは、右追加前に手形割引収入の計上時期につき控訴人主張の処理がなされていたことを意味するものではなく、同条は金銭債権一般につき規定したものであり、その解釈に当つては公正な会計慣行を斟酌すべきである(同法三二条二項)から、手形割引により取得した債権につき前示のように取り扱うことは、同条の解釈と矛盾するものともいえない。更に、」を加える。

3  同一八枚目表一三行目の「手形割引料収入の」から同裏一二行目の末尾までを「それらの事実を裏付ける明確な証拠がなく、控訴人のそれらに関する供述はにわかに信用することができない。」と改める。

4  同一九枚目表三行目の「保険料代理店契約」を「保険代理店契約」と改め、六行目の「成立に争いがない」の次に「甲第四〇号証、」を加え、「乙第二号証の一、二、四」を「乙第二号証の一、二、同号証の四」と、七行目の「同号証の二」を「乙第一三号証の二」と、「第一回」を「原審第一回及び当審」と、同裏一行目の「受けた」を「受け、昭和三八年分については個人元帳に手数料収入として記帳している」とそれぞれ改め、同行から二行目にかけての括弧書部分及び三行目の「なお」から四行目の末尾までをそれぞれ削る。

5  同一九枚目裏一一行目の「再割引して」を「再割引を受けて」と、同二〇枚目表七行目の「博栄会に関する支払利息」を「控訴人の各年分の博栄会」とそれぞれ改め、末行の「乙第五四号証」の次に「(ただし、後記信用しない部分を除く。)」を、同裏一四行目の「認められ、」の次に「右認定に反する控訴人の当審における供述及び乙第五四号証の記載の一部は信用することができず、他に」を、同二一枚目表九行目の「甲第三八号証の一ないし四」の次に「第四〇号証」をそれぞれ加え、同項から一〇行目にかけての「甲第四〇ないし第」を「甲第四一、」と改める。

6  同二一枚目表一四行目の「である」の次に「(控訴人が同年中に同人に対し利息として五二五〇円を支払つた限度では、当事者間に争いがない。)」を、同裏一行目の「である」の次に「(控訴人が同年中に同人に対し利息として一万六五〇〇円を支払つた限度では、当事者間に争いがない。)」を、六行目の「支払」の次に「つた」を、八行目の「である」の次に「(控訴人が同年中に同人に対し利息として同金額を支払つたことは、当事者間に争いがない。」をそれぞれ加える。

7  同二二枚目表一二行目の「雑費」の前に「各年分の」を加え、同裏五行目の「、四五条一項」を、同二三枚目表三行目及び九行目の各「本人」をそれぞれ削り、一行目の真正に成立したものと」を「原本の存在及び成立が」と、五行目及び一四行目の各「第一回原告本人尋問の結果」を「原審第一回及び当審」と、七行目から八行目にかけての「約二億四〇〇〇万円」を「約二億五〇〇〇万円」とそれぞれ改め、同裏六行目の「上申書」の次に「(甲第一号証)」を、七行目の「手形取引行為を」の次に「同年一一月の」をそれぞれ加え、同二四枚目表六行目の「同四二年分」を「同四〇年分」と改め、九行目の「右収入金額の」の次に「合計を二九〇五万一八五一円に、その」を、一〇行目の「右必要経費の」の次に「合計を三三〇五万七八六二円に、その」をそれぞれ加え、同裏末行の「右利息表」を「右利息明細表」と改める。

8  同二五枚目表一四行目の次に行を改め次のとおり加える。「ところで、この点につき控訴人は当審においてその供述内容を改め、控訴人が右同日現在保有する手形のうち支払期日に不渡りのおそれがあるものについては東京大証の手持ちの手形と差換えを行い、右利息明細表に記載された手形はこの差換えにより取得した手形であるところ、その後同様の理由により右利息明細表に記載されている右差控えにより取得した手形の一部を更に差換えし、右上申書にはこの再差換え後の手形を表示した旨供述する。しかしながら、右利息明細表記載の手形が昭和四一年五月一九日現在控訴人の保有したその主張に係る手形の差換え手形であることを裏付ける証拠は存在しないこと、原本の存在及び成立に争いのない乙第六号証の一〇、同号証の一三、同号証の一八及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は昭和四二年四月一三日の時点においても再差換え前の手形と主張する手形を保有していたことが認められること、更に前掲甲第一七号証の一ないし八によれば、控訴人が同年三月一四日付けで発送した各債権放棄通知書に控訴人主張の再差換え前の手形が表示され、しかも右各書面には控訴人の所持印が押捺されていることが認められること、更に控訴人の主張によれば、再差換手形は既に満期到来後のものを差し換えたことになるし、差換手形による延長日数に対する経過利息の算出については、差し換えられた手形の満期と右利息の元本及び起算日との間に大きな食い違いがあることに照らすと、控訴の右供述は信用することができない。」

9  同二六枚目裏等一〇行目の「いる」を「おり」と改め、一一行目の「認められる。)」の次に「、また控訴人が貸金業廃止の届出をしたとの主張立証はない」を、一三行目の「なお、」の次に「控訴人は、前示のとおり昭和四二年一二月一九日には貸金業開始届出をして金融業を正規に営むに至つており、」を、同二七枚目表五行目の「本件謝礼金」の前に「なお、後藤観光からの」を、八行目及び九行目の各「給与所得金額が」の次に「少くとも」を、同二八枚目表一行目の末尾に「このことは、弁論の全趣旨により認められる右議事録が本件に関連する控訴人の刑事被告事件の弁護人により初めて発見されたとの事実からも裏付けられる。」をそれぞれ加え、同二七枚目表一二行目の「及び」を「は当事者間にあらそいがなく、」と、一三行目の「事実は」から末尾までを「ことは前示のとおりである。」と、一四行目の「本件」を「控訴人が東京特殊鋼から受け取つた右」と、同二八枚目表三行目の「上申」を「上申書」と、「第一回」を「原審第一回及び当審」と、同裏三行目から四行目にかけての「東京特殊鋼の」から五行目の「が含まれて」までを「東京特殊鋼は、右各年度の確定申告書において、控訴人からの借入金と称する右金額について、前記斎藤みつ子や大沢花子、織田昭八ら東京特殊鋼の社員からの借入金を含めた合計額として計上して」とそれぞれあ改める。

10  同二八枚目裏一一行目から一二行目にかけての「第二一号証、」を削り、一三行目の「乙第一一号証」の次に「、第二一号証」を加え、同二九枚目表一三行目の「迄」を「まで」と、同裏一行目の「同二及び」を「同号証の二、」と改め、七行目の「甲第二〇号証、」を削り、八行目の「四及び五」を「同号証の四、五、原本の存在及び成立に争いのない甲第二〇号証」と改め、同三〇枚目表五四行目の「雑所得」の前に「昭和三八年分」を加え、五行目の冒頭から八行目の末尾までを削り、一〇行目の「(1)」を「(一)」と、同裏五行目の「第一、二回」を「原審第一、二回及び当審」と、八行目の「(2)」を「(二)」とそれぞれ改め、九行目の「主張するが、」の次に「一般に金融業にとつて導入預金の設定が附随的な行為であるとはいえないし、又」を加え、同三一枚目表三行目の「(3)」を「(三)」と、六行目の「(1)」を「(一)」と、る同裏一三行目の「第三二号証、第」を「第三二、」とそれぞれ改め、同表一一行目の「ものである」の次に「(同法附則二条)」を加え、一四行目の「(4)」を「(四)」と改め、同裏一一行目の「第四八号証、」の次に「第五一号証、」を、一三行目の「第三三号証」の次に「第四五号証の二ないし一五の格イ、ロ」をそれぞれ加える。

二  よつて、本件控訴は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 河野治夫 裁判官平田浩は、差支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官 丹野達)

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